トカゲ 初夏に 羽生槙子
トカゲが二匹 庭のまん中で しっぽからげて 輪をかいて 一匹が一匹のおなかをしこしこかんで 動かなくなった わたしは 遊んでる! と思い ケンカ と思い それから愛だとわかった 二匹とも土色のヨロイ おなかが淡い金色 少しぶきみに美しく うちの庭の現実感と違って 妖精の世界のできごとのよう そういえば今朝は 庭にまく水がみんな虹になったんだった そして次の朝 きゅうりの種をまいたばかりの きのうは何もなかった平らにならした土の上に 殻が割れて 中がカラッポのトカゲの卵が一個 中がぬれているのが 置き忘れ物みたいに転がっていた