トカゲ 初夏に          羽生槙子

トカゲが二匹 庭のまん中で しっぽからげて 輪をかいて 一匹が一匹のおなかをしこしこかんで 動かなくなった わたしは 遊んでる! と思い ケンカ と思い それから愛だとわかった 二匹とも土色のヨロイ おなかが淡い金色 少しぶきみに美しく うちの庭の現実感と違って 妖精の世界のできごとのよう そういえば今朝は 庭にまく水がみんな虹になったんだった そして次の朝 きゅうりの種をまいたばかりの きのうは何もなかった平らにならした土の上に 殻が割れて 中がカラッポのトカゲの卵が一個 中がぬれているのが 置き忘れ物みたいに転がっていた

*「想像」86号 横浜市港北区下田町6-14-33、羽生方
*「想像」の今号では、原子力資料情報室の山口幸夫さんの理科教育に関する文章や、高木仁三郎さんの「高木学校とその志」 の文章が印象的です。
 高木仁三郎さんが刺激を受けた宮沢賢治の文章より
「…そこでこれからの仕事はあなたは直感で私は学問と経験で、あなたは命をかけて、私は命を大事にして共にこのイーハトーブのためにはたらくものなのです。

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