佇立するマドンナ

佇立する僕のマドンナ あんたの沈黙が塔のように立っている。 僕の 佇立するマドンナ あんたの沈黙が風景とのきわどいせめぎあいに耐えている。 佇立するマドンナ 無形の闇 僕の 佇立するマドンナ あんたの沈黙の裂け目に一切の饒舌がなだれ込んで かき消える。 佇立する僕のマドンナ 微笑する 現代の病み 殺到する一切の熱  狂的信者たちのかたわらに佇立する あんたの沈黙が瞬時 佇立する 瞬時 赤いあんたの唇が僕の胸を這いずる。 赤い 濡れたあんたの唇が胸の乳首を這いずる。 赤い濡れた あんたの唇が はだけた胸の乳首を含み 充血した胸の乳首が 立つ 瞬時 一切の乳首が立ち 僕の 胸にしるしが立つ。 記憶の中 折れた道標。 ざわめきの中 群衆の中の 無数の鼓動のひとつ の中の群衆。 退屈した胸にしるしが立ち 一切の物語が その一点で破産する。 一切の意味一切の区画一切の墓標が その一点で破産する その一点。 一切の僕 があんたに与える神話 自壊する あんた(そして/あ  るいは)一切の僕。 佇立するマドンナ 破産した綱領 ネコ博士の正体はあんただった  のか? あれはあんただったのか? 眠りの光景を掠めた白い影 あれはあんただったのか? 朝焼けの原子爆弾 百年のまどろみのまっ只中に 神様たちへのIDカードが乱舞する。 一切の僕が自信に満ちて行為した時代。 「私が神である。もし私が神でないとすれば、それはつまり神が存  在しないということと同義である。」 神は存在したし、僕らもまた存在した。僕らは僕の主体として、神  は一切の僕として。 覚醒を遠く離れて 僕らは百年のまどろみを行為した。 あるいは百年の熱狂を 僕らは行為した。 なけなしの勇気なけなしの情熱なけなしの暗示を 自己暗示した。 あるいはそれは 瞬時の過程に過ぎなかったのかも知れない。 佇立するマドンナ あんたの沈黙のかたわらに世界が現象している。 世界が 暫時 現象する。 僕らは春の並木道をそぞろ歩いた。 桜花舞う 春の並木道を そぞろ歩いた。 目の見えなくなったあんたの腕を取って 僕は情景を語った。

戻る

ホームページ