詩集「友誼」
犬塚昭夫 著
友誼
靴をつくる
帽子をつくる
ブラウスをつくる
背広をつくる
生活に必要なものをつくるのだ
つくることが
それがおれたちの労働で
だからおれたちは労働者だ
働いて
人生を生きているのだ
国はちがっても
労働者同志
戦争には反対だ
友誼と
連帯を
そだてるのだ
洗濯機をつくる
電気釜をつくる
テレビをつくる
冷蔵庫やクーラーをつくる
生活に役にたつものをつくるのだ
つくることが
それがおれたちの労働で
だからおれたちは労働者だ
働いて
しあわせをさがしているのだ
国はちがっても
労働者同志
戦争には反対だ
友誼と
連帯を
ひろげるのだ
椅子をつくる
机をつくる
新聞をつくる
雑誌や本をつくる
平和な生活のためにつくるのだ
つくることが
それがおれたちの労働で
だからおれたちは労働者だ
働いて
自由をかちとるのだ
国はちがっても
労働者同志
戦争には反対だ
友誼と
連帯を
まもるのだ
その時
その時がきたら
愛とか
きずなとか
くらしとか
平和とか
みんな否定される
それは何の役にもたたないからと
その時がきたら
銃とか
砲とか
ミサイルとか
暴力や拷問や虐殺が
みんな肯定される
それはこの国のために役にたつからと
その時とは
いったいどんな時だろう
その時のことを
政治家も
学者も
ジャーナリストも
日本有事だというのだ
どこからか
この地球上には存在しない国から
ミサイルや
原子爆弾が
落ちてくるというのだ
戦車や
戦闘機や
軍隊が
やってくるというのだ
その時のために
今からそなえておかなければならないというのだ
はじめから
その時というのは
想像的空想なのだ
人間が人間として
愛や友情や連帯で生きているかぎり
その時は永遠にこないのだ
地球上の人間がみんな
人を殺す目的で
兵隊になって
人間から殺人鬼に変身してしまわないかぎりは
日本有事は
それはだれかがしくんだ事件だ
いったいだれがしくんだのか
そのしくんだ者は
目的は
何か
*詩集「友誼」断腸文庫16
発行 異郷社 堺市今池町6-6-9 定価1300円
ぬえのように捉えどころのない、政治的決断とか思想とかいう明晰さのない、それでいて個とか個の意志とかを窒息させてしまうような、最近の政治状況にあらがって出された詩集です。
病身をおして、詩の活動を続けておられる姿勢は尊敬に値します。ぜひ、一読を。