雨の朝
          ホン・ヨンウンに
                      下前幸一


遠くどこかで
記憶が吹かれていた

辿りようのない
焦燥の中途で

雨の朝

ベランダに影を落とす
冷えた言葉

電線にぶら下がった
十二月の
使徒

君は逝ってしまった

人気ない歩道の
錆びた物思い

ダンボールの街に
剥がされた年の瀬

僕は聞いた

沈黙に打ちながら
遠ざかる君の歌

雨に煙る
信号機の悲しみ

おびただしいものが
外れを行進していた

忘れていた余白が
微かな熱を帯びていた

言葉を
僕は捜した