爆撃された三月
               下前幸一


爆撃された三月
花冷えの
遠い窓辺にいる

薄曇りの視界に
形のない痛みが走る
僕たちに何ができただろう

照準の向こう
炸裂する劣化ウランや
処分された現実に

言葉は声もなく
自らを剥離する
人影に安否を尋ねても

僕たちに術はない
圧倒的な物量と
武装した「民主主義」に

知ることの根源が、今
刻々と
制圧されていく

膨張する情報や
繰り返される戦況に
感覚は白く被曝し

何かがまたダメになっていく

花冷えの
遠い窓辺から
書き込みのない明日へ

僕の中で軋む、今
目撃が
記憶をさぐっている

何が
僕たちにできるだろう