詩集「裸電球」    丸山全友 著
 裸電球
 
私は裸電球が好きだ
わびしくて素朴でオレンジ色の
暖かい光を放つ裸電球を見ていると
幼い時の私の姿が浮かび出す
病気のため激痛の走る手足を押さえながら
涙の目で見た裸電球は
まばゆく線香花火のように見え
大人になれば丈夫になるぞとの
将来へのかすかな希望のようでもあった
裸電球の下で貧しくとも
家族そろって食事をした楽しい思いで
秋の夜長に内職をした苦しい思いで
久しぶりに裸電球に触れてみる
あの暖かさは今も同じだ
電球に触れる
私の手だけが大きくなっている
 

 ぼくの世界
 
窓に差し込む日ざしはわかっても
太陽の色や形はわからない
部屋の形はわかっても
家全体の形はわからない
窓から見える空の広さはわかっても
空全体の広さはわからない
庭木でなく鳥たちの声はわかっても
その姿を見ることはできない
窓から見える山の木はわかっても
山全体はわからない
ラジオやテレビで
世界の出来事はわかっても
家の中の出来事はわからない
 

 
詩集「裸電球」
代価1100円(送料込み)
〒761-0821
  香川県木田郡三木町鹿庭335番地
  087(899)0796
             丸山全友
 著者は、幼少からの難病を克服して、農業に従事する詩人。
闇を照らす裸電球のように、裸電球のまなざしで、暮らしの点景をつづっておられます。
「ぼくの世界」のラスト三行はとてもするどい批評だと思う。