非表示の

これは何
と君が促す指先に
鉛色の
非表示の闇

沖縄自動車道の
ゆるやかなカーブを加速する
美ら海水族館への途中

ふと、口をつぐむ
沈黙のよどみに
見えないものがうごめいている

これは何
この非表示の現実は

カーナビの
液晶画面の薄闇に
びっしりと凝視するもの

自動車道のコンクリートフェンスの
冷たく発熱する異界
広大な無明の傍らを
僕たちは疾走している
アンパンマンのテーマをかたわらに

二〇〇八年の初春の現実が
足元から溶けていく

美ら海から
バグダッドへ
劣化ウランの殺戮へ
自爆の粉塵へ

集団自決の洞窟へ
ハルモニの小屋へ

見えないもの
見ようともしないもの
削除されてあるもの
脅かされているのは
僕の中の自明

言葉もなくそして僕たちは
非表示の場所へまぎれる

あるいは場所が僕たちの中へ