(リレー詩◆時)
この時を重ねて 桂あさみ
「もしもし!わたし 法隆寺をボランティアで案内しているの来ない」
「世界遺産やものね出かけようかしら」
「わたしよりベテランで詳しく説明してくれる人頼むし」
五月というのに真夏を思わせる日差し
「紫外線強いわ このまま夏かしら」
顔を日陰にして腕章をつけた友と語り合う
両並木に囲まれた参道を進むと右側にテレビを賑わした
茶屋の跡地が掘り起こされ
何か遺物が発掘されたのだろうか気にかかる
一軒巾の参門を潜ると自然と過ぎた時を遡りだす
こねた土を塗り乾かして又塗り重ね バームクーヘンのように積まれた土塀の巾に
おもわず両手を広げる
つぎの参門は間口が二軒だが真中に柱が立てられて何のために区切られたのか
これについて聖徳太子に纏わるいろんな説があるのだそうだが
わたしは単純に強化の為ではないかとおもえた
聖徳太子によって建てられた寺院 広大な境内に散存する宝物
一千三百年いやこれにも一千四百年と百年ずれがあるこれも謎である
当時 僧侶達による対立のために火災にあいながら 悠久の時を伝えて行く建物は
世界の宝物に 素直にロマンを感じてすっかり無口となり回廊横にてしばらく立ちどまる
連子窓からの光りがくっきりと回廊に流れて光陰の如く時を刻んできたのだろう
太子の供養の為に建てられた上宮院夢殿八角堂へと石畳を踏み締め向かう
一千四百年を脳裏に留めるには細胞が攪拌されてツキンと痛む
この敷石は「大阪市電廃止」昭和三十年頃からつぎつぎと運び込み敷き詰めたとのこと
境内に昭和の響きが往来する
なんだか夢からさめて軌道修正しているような気分になっている
ふりかえると参門の並木は何事もなかったように見送ってくれた
「世界遺産維持していくのって大変なことね」
「明日もくるのよ!またいつでも来てね」
調べれば調べる程に新たな発見があるのだそうだ
謎多き法隆寺にすっかり魅了された友は日焼けした庚に満弁の笑顔を浮かべていた |