見ることは
下前幸一
枯れ河で
時を過ごした
焼けた川床に
椰子の影が落ちていた
何も動かない
ただ、さらさらと崩れていく
物思いの中途
真空が開いていた
薄い今
際限のない場所に
僕はいた
傾き始めた空に
小さなヘリコプターが
パタパタと鳴っていた
風化した遺言を偵察している
午後、遅く
コーランの読誦が
再びの時を告げる
時が動く、そのとき
深い息に僕らは
ようやく小さな安堵を浮かべるのだ
オアシスの路地に
村人の影が行き来する
かすかな尾を引きながら
渇きは遠ざかり
鈍痛が陸に沈んでいく
冷めていく寺院の
佇立する塔
見ることは傾くことだ |