ものもらいのバラッド                          
                              玉野井 徹





ジャケットは彼女ツーから 靴は彼女ワンから
メガネは給料で買いましたが その給料も会社がくれたのです

ものもらいもよくできますが ものもらいができる目も カラダも 親からもらった物で
自分の物だったものなんて 何ひとつないのです

いろんな考えも 誰かの受け売りのようで 歩き方も 食い方も 泣き方も 怒り方まで
どこかの誰かに似ているようで

こんなことでは ああいったい何をして生きてきたんだろうと思ったりするのですが
そんな人も大勢いることももう知っていて ため息だけがすきま風のように洩れるのです

お金ばかりを借りて死んでしまった人も 愛犬に引き倒されて死んだアル中のピンクも
喉の癌で死んだ郁子さんも 早朝突堤で急死した親父も
みんなうつろう亡霊になって 僕の魂と一緒に砂丘の上空を舞っています