新・現代詩 詩人 2004
《新・現代詩》の提言

 日本の詩の衰退を憂慮する声が聞かれるようになって久しいものがある。現代詩の衰退は批評精神の衰退であり、詩の方法意識の衰退である。
 この衰退の大きな要因は、戦後『列島』、『現代詩』とつづいてきた詩の運動が、経済の高度成長期に途切れてしまったことにあり、運動のなかではじめて可能になる生き生きしたコミニケーションや討論、方法論の探究が行なわれてこなかったことにある。
 戦後の詩運動がめざしたモダニズムの克服という課題は拡散し、言葉の音と意味を切り離したモダニズムや、身辺雑記の詩が相変わらず多く書かれているように見える。
 わたしたちはこのような状況を変革し、わたしたちの生きる現実と世界に目を向け、現代詩の本来の課題に立ちかえって、詩の再生をめざすために『新・現代詩』を創刊することにした。
 もとより詩人の創作活動は自由であるが、詩の形式と内容は不可分に結びついており、言語の音と意味を最終的に切り離すことはできないことぐらいは、おたがいいに確認しておきたう。
 詩の方法としては、現代詩においていまだに正当に認められていないドキュメンリーやモンタージュ、寓喩などを重視し、ユーモアやサタイアを盛んにし、また抒情に歴史性をもたらしたい。そしてイデオロギーから解放された目で物そのもの、現実そのものの奇怪な姿を見つめ、未来の世代のために、人間と物、人間と自然、人間と人間の新しい関係を再創造したい。〈物〉というのはあるがままのそれではなく再構築 (リコンストラクション) された物、有用性を剥ぎとった新たな物でもあるということはいうまでもない。
 『新・現代詩』はこのような意図のもとに、従来の同人誌や商業誌とは異なった幅広い運動体としての詩誌をめざしている。
 心ある詩人と読者の結集を呼びかけたい。

          二〇〇一年五月  『新・現代詩』編集委員会
T新・現代語のポリシー…《新・現代語》の提言/新・現代詩の姿勢につ いて
U詩篇‥・会員72人の力量が試される、「新・現代詩」3年間の成果!
V評論・‥戦後詩を領導した二人/モダニズムと萩原朔太郎/大正デモクラシーと童謡運動/「性」先進国文化と浮世絵/性同一性障害と詩/反体制としての老い/六道めぐりを構想/日本人の血/いまだ関係性を断ち切れな いモノへ の反逆/村<ムレ>と詩<うた>