窓の鳥と遊ぶ
            庄司文雄

 ビャーッ、ビャーッという啼き声が、か
らっとした九月の空にひびいている。
ヒヨドリだ。庭の無花果の枝葉が揺れ、
ボサボサ頭を振りながら熟れた実を一
心に啄んでいる。初夏の頃にはユスラ
ウメの木に紅い実を求めてやって来た。
 ヒヨドリ、スズメ、シジュウカラ…キジバ
トも来た。我が家の三坪の庭に、朋有リ
遠方ヨリ来タル。
 部屋の窓越しに鳥の姿をとらえる。束
の間、窓の鳥と遊ぶ。
 スズメのウインクによろめいたり、キ
ジバトのお説教に恐縮したり…なんて。
そんなことが起きたら楽しいだろうなあ。
あれ、さつきまで何を悩んでいたんだろ
う?いつの問にか時間がスキップしたよ
うだ。
 (空の鳥を見よ)
 鳥の時間に触れながら、新約聖書の言
葉を想う。
 ヒヨドリの食べ残した無花果の実がひ
とつ、赤い果肉が秋の陽に晒されていた。

「風の暦」Vol.8

 詩とエッセイと写真とで構成されたハガキ通信です。
 窓に訪れる鳥のように、月に一度、僕のもとを訪れます。庄司さんにとって、鳥がそうであるように、目にすると、日常の時間をスキップするような気がします。