すでに

すでに 赤よりであり
      黒よりであり
ダークを装うことはない
曖昧ではあるが
虚無からはほど遠い
赤よりであり黒よりであるので
係累はいない者として
選ぶ
赤が遠のき
黒が近づく歳ではあるが
臙脂を装うとして
はみ出してしまう
今も
木霊は画布の中に
抽象から具象ではなく
具象から抽象の中に
消えるのが望み
赤と黒との接点を
押し開くようには
定まらない 感覚と感情の
赤と黒とを混合して
光をただ待つ
山からの風を頼みに
海からの湿気は いずれ
黒を基調にし始めるので
窓辺の陽の移ろいに従って
動く
心情がよそ見している間のこととして

「CUS CUS 20号」より。

 心情の傾き、ゆらぎを、それとして、具象に仮託することなく、あらわそうとしている詩です。安易に、具象に乗りかからない心情が、具象以上の質量をもっています。
 しばらく中断していた「CUS CUS」ですが、20号から19号へと下がっていくのだそうです。