薄明りの朝に
下前幸一
四月
自閉する都市
人気のない繁華街に
超低音の警笛が鳴り渡る
すさぶ不安
井の中の閉塞に
自粛する時
孤独な地球の
メリーゴーラウンド
私たちは自転する
計り知れないものに
ただ要請されて
密集・密接・密閉
メガシティーに密集し
億年の遺伝子に密接し
見えない境界に密閉されている
ロックダウンの世界史に
私たちの日々が
なだれ落ちていく
悪を探し
悪を名指し
互いに悪を断罪する時
どこに思いを掛ければいいのだろう
正解は靄の中
湿った土間の記憶と
樹木にぶら下がった果実
コロナ世代の子供たちが
離れ離れに
強く交信している
禁じられた公園の
閉ざされた砂浜で
三密の出立を
悟られないように
虚に呼び交わす
薄明りの朝に
私たちはすでに
深く感染している