詩集「うちゅういち」  中尾彰秀 著

 芙蓉
 
ピッカピカの真新しさに音弾け
 
一切の腹立たしさ後悔うらみ
涙ぐましき事々
何もかもあっけらかんに
好きになってしまうと
世界が どっと
私の内に入る
言葉なんぞ
すっぽり忘れたまえ
宇宙の柱のごときものに
すぐ様 貫かれ
オーロラ溢れ出す
 
もの背後春は静かに座しており
 
生まれるずう――――――――――――と
以前から知っていた
一点でありながら無数 宇宙大
あらゆる存在の基よ
やあ   柔らかい しっかりした旋律
ど こ か ら と も な く
淡いピンク色二つ三つ
動物か人か幾多の死骸踏みしめて
近所の高層ビル横空地に
シャキッと咲いた
芙蓉の花よ 
発行 竹林館
 京都府長岡京市井ノ内坂川25-21
 詩集の題となっている「うちゅういち」は、おさめられている全五十句の俳句の題でもあります。ジャンルを越えた「自在」を感じます。この詩でも、俳句が使われていて、芙蓉のたたずまいのシャキッと感を演出しています。