詩集 砂の降る場所から



君が見たのは

あの日は寒く

詩の脱領土化の方へ

いつか不確かな空に

まつろいに

二〇〇一年、二月。今ここに、

君を見ていると

降り始めた夜の雨

インターネットな詩のために

突堤に

爆撃された三月

イラク戦争断章

砂の降る場所から

あとがき
 詩はどこから来るのだろう? 詩以外のところから。詩はどこへ向かうのだろう? 詩以外のところへ。詩の起源であり、また目的でもあるその場を、状況と呼ぼう。
 状況は、あらかじめある場でも、唯一の客観的な現実でもない。それはむしろ詩作そのものによって、詩作との相互作用によって、そのつど発見される、振動し、明滅する場である。
 詩と状況との界面を思考すること。それは、あらかじめある思想(詩論)によって、その動的な場を囲うことではない。むしろ、思考そのものを、詩と状況とが生成されるその場にさらすということ。「希望」は場によって与えられるものではなく、自ら自身を生みだすしかないのだ。
 詩と状況は今、モザイクのような状態でしかありようがない。モザイクを覆う論ではなく、自らが現場である個的な切実な論が必要なのだ。今回の詩集は「希望」のためのささやかな試みであると思っている。
                                   2005年10月27日  下前幸一