二〇一四年のいま

沈黙の証言に

背中合わせで寝ていると

理由のない午後に

とも綱をほどいて

   *

君が残したものは

メルトダウンのあとに

三・一一 突然の雨

あなたを忘れないために

降り始めた雨

  *

いつのまにか雨が

参道に人影はなく

思いが心に泊まるとき

報道は雨に濡れ

真新しい晒しにくるまれたお骨は

  *

タチソ坑道の奥

デイゴの花が咲いていた

ダハズ農園にて

八九六四

表現の不自由展・その後

  *

路線バスを待つあいだ

長い午後

八月の櫓

あんたの言い方はまるで

  *

知ることは僕らの根っこ

九条の樹

がなの用法・用量について



  ……コロナに関わる詩を書きながら、ふと、それ以前の詩を荷造りしなければと思い立ったのが、昨年の秋ごろ。合間合間に、書き散らした詩を集めて、いろいろと並べ、並べ替えては荷造りをしていった。最後に出した詩集は『二〇一二年の仮歩道から』と題したもので、あれから一〇年近くになってしまった。その間、身辺がごたごたしたこともあって、詩作を着実に継続するというわけにはいかなかったが、それなりに集まっている。東日本大震災後、しばらくしてから二〇一九年ごろまでの作品。葬りたいというような気がするものもあるが、ほぼ手を加えずに掲載した。取り繕っても仕方がないとも思った。詩集は詩の墓のようなものかもしれないとも思う。
(あとがきより 2021年1月))
 

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